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コラム

大規模倉庫火災とその付随リスクに関する考察

2017年4月20日
リスクマネジメント事業本部
リスクエンジニアリング事業部 リスク調査第2グループ
グループリーダー
鈴木 拓人

4月も半ばを過ぎすっかり暖かくなったが、この冬は例年にも増して火災が多く発生したように思う。なかでも、新潟県糸魚川市の大火、埼玉県の倉庫火災は規模も大きく、少なからず将来にも影響を与えるものと思われる。

埼玉県の倉庫火災のニュース映像では、建物の屋上に敷き詰められた太陽光パネルの存在が目をひいた。図1に示すように、近年、太陽光発電の導入量は著しく増加しているが、太陽光発電については、これまでは経済的なメリットを重視した議論が中心で、リスクの対象として捉えられることはあまりなかったのではないだろうか。

図1 太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移
図1 太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移
(出典:経済産業省「エネルギー白書2016」(図【第213-2-7】))

太陽光発電のシステムは「太陽光パネル」「パワーコンディショナー」「関連機器」から構成されるが、いずれも電気機器のためそれぞれに出火リスクがある。また、太陽光パネルの素子は陽が当たる限り発電を続けるため、消火活動時の感電リスクがある。現在のところ、難航した消火活動との関連については不明であるが、太陽光発電のシステムが火災リスクの増大要因としてクローズアップされることになるかもしれない。

話は変わるが、今回の倉庫火災に関連した当社への問い合わせの中に、「火災のため周辺住民に避難勧告が出されたようであるが、避難所の設営などに関する費用についての責任はどうなるのか」というものがあった。回答としては、火災の賠償責任については失火法(火災による不法行為責任は問われない)があるので、法的には火災による賠償責任は問われないというのが一般的であろう。また、避難勧告は災害対策基本法第60条により市町村長が発令したものと推定されるが、災害対策基本法では責任企業への求償を想定していないようである。

ただし、法的な賠償責任と企業の社会的責任は別である。出火元の企業は近隣の約300世帯に1世帯あたり1万円、避難した世帯には個別で見舞金を支払うという報道がされており、社会的責任や近隣との関係を重視していることがうかがえる。ところで、このような見舞金に相当する費用が火災保険で補償されることをご存じだろうか。倉庫など大型の企業物件を対象とした火災保険契約では、火災などの損害に対して支払われる損害保険金とは別に臨時費用保険金などが支払われる。

今回の倉庫火災に関しては、国土交通省、総務省消防庁による対策検討会が始まった。本検討会は大型倉庫の防火対策と消防活動について議論するもので、例えばスプリンクラー設備に関する基準を規定する消防法施行令第12条のうち、スプリンクラーを設置しなければならない倉庫の条件となる天井の高さやラック式倉庫の定義などに議論が及ぶことであろう。では、仮に消防法施行令が改定された場合の影響はどうなるのだろうか。百貨店、学校、事務所、倉庫など、防火対象物の用途区分表(消防法施行令別表1)に示された防火対象物は消防設備を遡及適用しなければならない。そのため、建築時には適法に建てられていても、その後の法改正などにより現行法に対して不適格な部分が生じた建築物、いわゆる既存不適格建築物となった場合は、経過措置期間に消防設備を改善しなければならないということになる。本検討会は2017年6月までに結果を取りまとめるとしているが、もし施行令が改定されるようなことがあれば、これらの対策が求められることになるであろう。

執筆者紹介

鈴木 拓人  Takuto Suzuki
リスクマネジメント事業本部 リスクエンジニアリング事業部 リスク調査第2グループ
グループリーダー/中小企業診断士/1級損害保険登録鑑定人
専門は化学、火災全般など

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経営企画部 広報担当
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