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コラム

食品安全に関する法規制とプライベート認証――食の安全・安心・信頼の獲得に向けて

2017年7月31日
リスクマネジメント事業本部
危機管理・食品事業部
上席コンサルタント
佐川 一史

2020年に向けて、様々な業界で法改正や国際化に向けての取り組みを推進する動きがあるが、食品業界でも大きな転換期を迎えようとしている。その中でも、食品衛生関係法令の改正で導入が準備されている「HACCP*1制度化」と民間取引で活用されるプライベート認証の1つである、2017年に公表された「日本発食品安全管理規格(以下「JFS」)」が特に注目されている(図1)。

表1 近年のラマダン期間中に起きた主なテロ事件
図1 食品安全に関する法規制とプライベート認証の動き
(出典:厚生労働省資料(http://www.food-communication-project.jp/pdf/study_h27_62.pdf)及び農林水産省資料
(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000122534.pdf)をもとに当社作成)

食品安全に関する法規制では、先進国の多くでHACCPが制度化され、食品衛生の世界共通言語となっている。しかし、我が国では、HACCPは長らく推奨事項にとどまっていたため、特に中小規模の食品事業者では、3割程度の導入にとどまっている。そのため、輸出においては相手国からの要求に対応することが困難となり、輸入においては内外無差別(国内に無いルールを諸外国に求めない)の観点からHACCPに基づく衛生管理を相手国に求めることができない状況である。それらを解消するため、厚生労働省はHACCPを制度化する準備を進めており、2016年に開催された「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会(以下「検討会」)」でHACCP制度化のあり方について一定の方向性を示した(表1)。

表1 食品衛生管理の国際標準化に関する検討会でのHACCP制度化のあり方のポイント
対象 製造・加工・調理・販売・保管業等すべての事業者(事業規模は考慮しない)
基準 A基準:Codexのガイドラインで示されたHACCP
B基準:HACCPの考え方に基づく衛生管理基準(小規模事業者向けを想定)
期限 制度化十分な準備期間を設けることが必要(具体的な期限は言及していない)

(出典:厚生労働省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11135000-Shokuhinanzenbu-Kanshianzenka/0000147434.pdf)をもとに当社作成)

HACCP制度化の対象はすべての食品事業者となっているが、B基準については現状の衛生管理の延長(危害要因分析、モニタリング頻度、記録作成・保管の弾力化)とすることができる仕組みを検討している。よって、HACCP未導入事業者でも過度に焦慮する必要はないと考える。とは言え、HACCP制度化に備えて人材教育の推進が強く望まれる。検討会でも触れられていたが、HACCPについてはまだ誤解が多く、それが普及の阻害要因になっている。HACCP未導入事業者おいては、まず、経営層自ら危害要因分析の実習が含まれている講習会に参画し、HACCPを正しく理解することが肝要である。

一方、プライベート認証では、2014年に開催された「食料産業における国際標準戦略検討会」において、(1)食品安全マネジメントに関する規格・認証スキームの構築、(2)人材育成、(3)海外の情報発信の3つが今後の戦略として提言された。それを受け、2016年には、食品事業者が中心となって一般財団法人食品安全マネジメント協会(以下「JFSM」)が設立された。JFMSでは、JFS-A、B、Cの3段階で規格を作成し、事業者の水準に応じた取り組みが可能となっている(図2)。JFS-A、Bの規格は監査および適合証明プログラムとなっており、特にJFS-B規格はHACCP制度化の受け皿になることが期待されている。また、JFS-C規格は「認証スキーム」として国際取引にも使用することを想定している。プライベート認証規格の多くは外国語の原文を翻訳したもので読解力が必要となるが、JFS-C規格は分かり易い日本語で記載されている。また、「現場からの改善提案の活用」という他の食品安全管理規格にはない特色がある。なお、2017年7月時点でJFS-C規格の認証数は19組織となっている。JFSMは、この認証スキームについて、国際的な食品安全の組織であるグローバル・フード・セーフティ・イニシアチブ(以下「GFSI」)に申請することを予定している。承認された際は、JFSは真の国際規格となり、さらなる認証数の増加が期待される。


図2 JFSの種類と主な目的
(出典:一般財団法人食品安全マネジメント協会資料(https://www.jfsm.or.jp/scheme/docs/JFS-E-C_outline.pdf)をもとに当社作成)

2017年7月には、JFSMおよび食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証のスキームオーナーである一般財団法人日本GAP協会の主催(共催:SOMPOリスクマネジメント)で、「食の安全・信頼シンポジウム」が開催された。その詳細は日経MJに掲載される予定である。

日本の食品業界では、2000年以降、食中毒事故や表示偽装の問題が頻発し、その度に安全対策、さらには安心に向けた取り組みが推進されてきた。世界に目を向けてもGFSI食品安全会議において、消費者に対する信頼性や透明性の確保について度々議論されており、「安全・安心・信頼の獲得」は世界的な潮流となっている。日本の食品は、諸外国と比べて、安全で高品質であると言われるが、それを客観的に示すことについては後れを取ってきた。HACCP制度化の実現とJFSの発展は、「安全・安心・信頼の獲得」という世界的な潮流に合致するものであり、ひいては、日本の食品事業者の輸出促進を後押しし、日本国内市場の縮小という食品業界の課題の解消にもつながると考える。

*1
Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字をとって略されたもの。原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属片の混入などの危害要因を分析(HA)した上で、危害の防止につながる特に重要な工程(CCP)を継続的に監視・記録する工程管理システム。
*2
国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations(FAO))と世界保健機関(World Health Organization(WHO))が設立した政府間組織(コーデックス委員会)で作成された食品衛生の規範。食品の安全性を向上させる手段として、HACCPに基づいたアプローチを勧告している。
*3
HACCPの概念を取り入れた衛生管理であり、営業者による食品の安全確保に向けた自主管理を促す仕組み。対象となる食品は、製造又は加工の方法の基準が定められた食品であって厚生省令で定める6業種。
*4
厚生労働省が発出した、食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)。この改正でHACCP方式を用いる場合の基準が追加された。

執筆者紹介

佐川 一史 Kazushi Sagawa
リスクマネジメント事業本部 危機管理・食品事業部 上席コンサルタント
専門は食品安全及び食品企業の危機管理

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経営企画部 広報担当
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